(画像はイメージです。本文とは無関係です)
幸せに死にたいなら、医者頼みやめよう
東京女子医科大学准教授 川嶋朗氏
膨れ上がる社会保障費。その中でも大きな割合を占めるのが医療費だ。東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長の川嶋朗氏は、「日本人は、自分の死や健康を自分 で管理しようとせずに医師に丸投げしており、それが医療費膨張の最大の原因になっている」と指摘する。そして、「個々人が死をしっかり意識し、延命治療の 要不要を自分で決めることができるようになれば、医療費の無駄が削減でき、個々人の生活の質も高められる」と主張する。
■日本人の平均、最後の7~9年は介護される生活
――川嶋さんは今年3月、『医師が教える幸福な死に方』という本を出されました。なぜ、「幸福な死に方」というテーマを選ばれたのですか。
かわしま・あきら 東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長・准教授、医学博士。1957年、東京都生まれ。北海道大学医学部卒業後、東京 女子医科大学大学院医学研究科、ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院などを経て現職。東洋医学に精通し、さまざまな代替医療を取り入れた統合医 療を手掛けている。西洋医学では、腎臓病、膠原病、高血圧などが専門。著書に「心もからだも『冷え』が万病のもと」(集英社新書)、「川嶋流 がんになら ない食べ方」(小学館101新書)、「医師が教える幸福な死に方」(角川SSC新書)などがある。
川嶋 男女の寿命が伸び、長寿社会になっています。長生きする以上、元気でありたいというのがみなさん、共通の願いだと思うんですね。ところが、ただ「生きたい」というだけで、なかなか死について考えなくなってしまっていて、そのために弊害も出ている。死を考えると、逆に死ぬまで元気でありたいとも考える。元気で長寿であることが重要で、それを提案したいと思い、この本を書きました。
――日本人は必ずしも「健康で、長寿」というわけではないのですね。
川嶋 世界保健機関(WHO)が発表した「世界保健統計2012」では、日本人の平均寿命は83歳で193カ国中1位でした。
しかし、一方で、「健康寿命」というものがあります。介護を必要としないで生きていくことができる寿命ですね。平均寿命と、この健康寿命との差が日本では 7~9年あると言われています。つまり、7~9年は介護を受けながら生きていくのです。医療や介護によって長寿が維持されているという側面もあるわけですね。
(後略)
個人的な体験で恐縮ですが、私の父は76歳で胃がんが再発して亡くなりました。
最初の開腹手術時にはすでに、リンパ節への転移が確認された状態。
「手術後、すぐに抗がん剤を投与すれば多少は がん をたたけるかもしれない。ただ、体力のある方ではないので、副作用も強く出るかも知れない。ご自身で判断をなさってください。悪くすると半年くらいの命かも知れません」
と医師に言われました。
悩んだ結果、父は何もしませんでした。
結果的に1年半くらいで胃に再発が認められ、亡くなるのですが、最後の入院の時には「病状が悪化しても、延命措置はしませんが、いいですか?」とはっきり言われ、父も同意するのを信じがたい思いで見守るしかありませんでした。
父は延命治療をせずに、最期を迎えました。
父が息を引き取る数時間前、「もうすぐ下顎呼吸という状態になると思います。そうなると、あまり長くはないです」と看護師さんに言われました。
下顎呼吸を調べたところ、
かがくこきゅう。
呼吸中枢の機能をほぼ完全に失った状態でみられる異常呼吸パターンのひとつ。呼吸補助筋との連動によって頭部を後ろに反らした状態となり、口をパクパクさせてあえぐような努力様呼吸がみられる。長い呼吸停止を伴い、そのまま放置すれば死に至る。終末期や意識障害における呼吸困難の症状として認められ、死期が近づいている徴候のひとつとされている。引用元: 下顎呼吸 | 看護用語辞典 ナースpedia.
ということです。
「最後の呼吸」と言われているもので、「苦しそうに見えても本人は苦しみを感じていないらしい」と言われています。
(もちろん、亡くなった方の話は聞けないですから、本当のところは判りませんが…)
父も苦しそうに見えましたが、最期までの流れを説明され、父が見送って欲しいだろう人にも立ち会って貰うことができました。
そして、私自身も感謝の思いを繰り返し伝えながら、父を見送ることができました。
振り返ると最後の数ヶ月は死期が迫っている不安、痛み、身の置き所のないだるさ、自宅にも帰れず病院のベッドから出られないもどかしさ、薬の副作用や他の要因からくる認知症様の症状…やはり辛そうに見えました。
私自身もずっと付き添っていられなかった自責の念もあいまって、「他にもっと違う最期の迎え方はできなかっただろうか」と一周忌を過ぎた今も考えることがあります。
父が「幸せな死に方」をしたのかは正直判りません。
ただ、沢山のチューブに繋がれ、機械に囲まれての最期ではなかったこと。苦痛を長引かせることにならなかったことが私にとっての救いです。
自分に死期が迫った時のために、「どう死にたいか」を書面に残しておくことは大切だと思います。
残された家族が後々まで「あの時の選択は正しかったのか…」と罪の意識にさいなまれないためにも。「死ぬ間際にこんな苦痛を味わうはずではなかった」と自分自身が思わないためにも…。
(中略)
まず人間は100%死ぬ生き物だということを意識することが必要です。最近は、がんにでもならない限り死を意識することがなくなっている。エンディングノートなどを書くときに、延命措置などもぜひ、考えておくことをお勧めします。
体のことに関しては、適切にアドバイスしてくれる医師をみつけることが大事です。自分の価値観に沿った医療を提供してくれるような医師です。気を使うような付き合いではだめです。
(後略)
「自分の人生をどう終わらせたいか」考えること。
「自分の価値観に沿った医療を提供してくれる医師を探す」こと。
【いつかおひとり様】が確定の私は当然のごとく準備していこうと思います。
なお、
川嶋氏が書いた『医師が教える幸福な死に方』の巻末には「医療処置意思確認表」が付いているそうです。