「墓じまい」という言葉、最近よく聞かれるようになりましたね。
「墓じまい」とは、お墓を守っていく人、(墓参りをする人)がいなくなる場合に、お墓を撤去したり、処分したりすることです。
なかには先祖代々の墓が遠方にあるため、なかなか墓参りに行けないため、近所で墓地を求めて移動するというケースもあるようですが、私の場合は墓を守っていく人間が確実にいなくなった墓じまいでした。
私が墓じまいをすることになった経緯
父には女兄弟しかおらず、その父の子どもは私を含めた女二人で、それぞれが結婚しています。しかも、地元にいる娘と父は事情があって縁が切れていました。
付き合いを保っていた私は遠くに暮らしています。
正直、「最終的な実家の始末は自分がしないといけないだろう」という意識は持っていたので、何度か父の家の片づけも手伝ってきました。
父は、胃がんの手術をしたあと、こんなことを言い出しました。
「仕事のパートナーでもあり何かと面倒を見てくれた妹(私にとっては叔母)に家と土地を譲って住んで欲しい」と。
「私は構わないけれど、遺言書を書いておいてね。お父さんには他の妹もいるんだし」と言いましたが、亡くなった時に父は遺言書を残していませんでした。
父の資産らしきものと言えば父が住んでいた家と土地だけ、しかも資産価値があるのは土地だけです。
私の姉は相続放棄をしたいと以前から言っていましたし、私も父の意志を尊重したいと思いました。
何くれと無く父の世話をしてくれていた叔母には私も感謝していたため、父の死後、「父が叔母さんに家を譲りたいと言っていた」と伝えると、「自分の家があるし、ご近所との長い付き合いもあって越す気にはならない。手続きとかも面倒だから相続はしたくない。あなたが相続をして、空き家で残っている実家(私の祖父母が住んでいた家)を解体してほしい。お墓も返して永代供養をしてほしい」と頼まれたのです。
ということで、叔母の力を借りながら、私が墓じまいをすることになりました。
まずはお寺に問合せ
檀家となっていたお寺に問い合わせると、「二家族分の永代供養料になる」と言われました。
父の妹家族が同じ墓に埋葬されていたのです。比較的早く亡くなった叔母とその子ども二人でした。
合計6人分の永代供養ということで、1人当たりの供養料×人数分がかかるようですが、今回は違う計算方法で菩提寺の住職さんが考えて下さったようです。
一般的な相場を調べようにも、そもそも、お寺によっての考え方や供養の仕方の違いもあったり、檀家としてのお付き合いの度合いなども影響するようで、一律には相場を語ることはできないとのこと。
我が家の場合は合葬墓への納骨という形で、合計100万円の供養料でお願いすることになりました。
申込書には没年・法名・俗名・行年等の記入欄があり、叔母がいないと分からないことばかりでした。
また、法要時のお供え物、御布施、志の内容や目安もお寺の事務の方に教えていただきましたが、「一升一重」のおけそく(お餅)と言われてもチンプンカンプンで、叔母がいつも使っているお餅屋さんに一緒に行き、お願いしました。
お寺や宗派によってもお供え物一つから違うのですね。
勉強になりました。
お墓を壊す
お寺の敷地内の墓所にお墓があるケースもあると思いますが、父方の墓は公営墓地にありました。二家族分の遺骨を墓を壊して掘り出し、お寺に持っていくため、お寺とは別に色々とすることがあります。
まずは事前に「改葬」手続きのための申請作業。
「改葬許可申請書」に必要事項を記入し、「改葬許可証」を発行してもらいます。
一旦お墓から取り出し、その後どうするかで必要な書類が違うようですので、事前に役所に確認が必要です。
並行して、公営墓地の近所の墓石屋さんに遺骨の取り出しを依頼。
「新しいタイプのお墓取り出し口があるが、古いタイプはないので、墓を壊してから取り出すため時間がかかります」とのことでした。
結局、丸一日近く作業に時間がかかり、費用は 262,500円でした。
(墓石の廃棄料や魂抜きなどの諸経費の合計。遺骨をお寺まで運ぶのは自分たちで行いましたので費用には含まれていません)
翌日、法要前に墓石屋さんに遺骨を取りに出向き、菩提寺へ。
永代供養の法要は私と夫、市内に住む叔母2人で執り行い、納骨、という流れになりました。
御布施やお供え物の目安は? お寺の事務所で聞いてみる
私の母や伯母達が日常的に仏壇に手を合わせる様子は今も見ることがあります。
私自身、母の実家や伯母の家に出向いたりすると、お線香を上げて手を合わせます。子どもの頃にお世話になった方々ですから。
しかし、菩提寺とのお付き合いの仕方、御布施、お供え物等の金額や渡し方については、全く知識が無いことに今回改めて気づきました。
そもそも宗派が違うと習慣や金額の目安も違います。
習慣や知識が無い以上、お寺の方にしっかりと尋ね、教えて頂くしかないと感じました。
その家の格式や、それを重んじる親戚の方がいらっしゃる場合は墓じまいはもっと大変でしょうし、菩提寺を変えるということになれば新旧の住職さんとのやり取りや宗教行事を何度も行わなくてはいけない、場合によっては戒名をもう一つ作らないといけないなど、さらに複雑で経費もかかってしまうのだろう思います。
幸い、我が家はそういった家柄でなかったこと、主に父の実家を見守ってきた叔母から「早々に永代供養をして、老朽化した父の実家も解体してほしい」という要望があったことで、私自身も迷いなく実行することが出来たわけです。
今後も増えていくだろう「墓じまい」。
それぞれのケースがあるでしょうが、何かの参考になればと思います。