(画像はイメージです。本文とは無関係です)

高齢者の悩み、本当は違う原因かも?

「複雑な話をされると混乱してしまう」「相手の言っていることをなかなか理解できない」「細かい説明書を読むのは苦手」「人の名前や必要な情報が覚えられない」

こんな悩みを持っている中高年の方、周囲にいませんか?

 

細かい文字が見えないのは老眼のせい…
ちゃんと話が理解できないのは耳が遠くなったせい…

物覚えが悪くなったのは歳のせい…。

 

50歳目前の私自身、色々な能力が低下し始めているいる自分にがっかりしながらも、初期の老化現象として受け止めざるえない…そんな気持ちになっていましたが、つい先日、その諦めの気持ちをもっと先延ばしにできるかも…と考えられる出来事に遭遇しました。

 

ある日、私はこれまでに経験したことのない頭痛に襲われ、神経内科を受診することに。

問診の後に頭部のCT撮影と、念のために頸椎のレントゲンも撮った結果、異常は見られず、「持病の蝸牛型メニエールの影響と考えられる」とのことでした。

 

脳に異常が無いことに安心しましたが、診察室を出る直前、医師に意外な言葉を投げかけられたのです。

 

「忘れっぽいと気にされているようですが、年齢的にも大丈夫だと思いますよ。過労や仕事、介護などから来る大きなストレスを継続して受けた影響で、注意力や集中力が極端に下がってしまう場合があります。歳だから記憶力が落ちたと言う人の中にも同じようなことがあります」

 

「ストレスや加齢で注意力・集中力が落ちていることを、記憶力が悪くなったと勘違いしているのかな?」

自分にとってはちょっと新しい視点でしたので最近の状況を振り返ってみると、日々の仕事の中でも、もしやと思うことがいくつかありました。

 

職場での自分の変化は記憶力が悪くなったせい?

昨年、50歳を目前にして、新たな業界でパート従業員として働くことにしたのは、「脳トレ」しながら老後資金を少しでも貯めていこうかな…という気軽な気持ちと、自宅でパソコンを前に仕事をしているだけではコミュニケーション能力が低下していくのでは? という不安があったからです。

 

衰退業界といわれているその職場は人手不足が激しく、人手不足がさらに離職者を増やし、悪循環に陥っているという状態。

人手が少ないことで未経験の中高年を採用せざる得ないケースもあるうえ、短期間に多くの仕事を覚えさせる必要があるため、詰め込み教育になりがち。

「私は記憶力が良い方では無いけれど、以前はもうちょっと仕事をすんなり覚えられたはず…」「あれ、何日か前に教わったこと、これで良かったんだっけ?」「…適正がないのかも」「能力がないのかも…」

と、仕事を続ける自信が無くなるほど落ち込みました。

じっくり考えながらマイペースで出来て、マニュアルも用意された仕事をしてきたこの数年間を経て、仕事をする瞬発力が落ちたのだろうか…。

もちろん、要因は幾つかあるのですが、「物覚えが悪くなったのは年齢のせい」と安易に考えていたのは間違いかも知れないと医師に指摘され、「注意力の不足」という問題に注目するようになりました。

先日同い年の友人が、「最近、テレビを見ていてもいつの間にかボーッとしていて、子どもに注意されるの。今のってああだよね、こうだよねって言われたことに全く反応できないから…」と嘆いているのを聞いて、私も気になって見始めたニュースの途中で他のことを考え始めている状況が頻繁にあることを思い出しました。

 

トレーニングでなんとかならないか? 

状況を改善にするには、どうしたらいいのか?

調べているうちに、「選択的注意」という言葉に出会いました。

 

選択的注意という仕組み

「選択的注意」という用語は心理学の世界で使うそうです。

「さまざまな情報がどっと入り込んでくる環境で、自分にとって重要だと認識した情報だけを選び、それに注意を向ける認知機能を指す概念」だといいます。

この「選択的注意」ができない人は、例えばBGMが鳴り、たくさんの人々がワイワイと話し合っている環境だと色々な音が耳に入ってきてしまうため、自分にとって必要な情報や目の前の相手の話に集中することができません。

 

そもそも聴くこと以外に視覚、嗅覚、触覚なども総動員しているわけですから、私たちは無意識にたくさんの情報を受取り、脳がそれを処理しています。「選択的注意」ができないということは、必要の無い情報まで受け取ってしまうわけで、これは疲れますよね。

 

「選択的注意」は、関係ない情報を無視することで、必要な情報だけを浮かび上がらせる抑制的な仕組みなのですが、加齢とともにこの抑制が弱くなるために高齢者では選択的注意が衰えるのではないかと考えられているそうです。

日々の買い物や、同僚との会話、上司から仕事の指示を受けるとき、家族と何か重要なことを話す時にも、この「選択的注意」が必要になります。それなのに、加齢に伴って無関係な情報を拾わないように抑制する仕組みも、選択的注意の処理速度も遅くなるために「注意力が落ちた状態」になっていくと考えられているようです。

(以上のように考えられてはいますが、理由はまだハッキリしていないそうです)

 

まだ諦めないで楽しんで老化に向き合う

「複雑な話をされると混乱してしまう」「相手の言っていることをなかなか理解できない」「細かい説明書を読むのは苦手」「人の名前や必要な情報が覚えられない」「新しいことが覚えられない」

こんな悩みが耳や目などの感覚器の能力低下のせいで、「歳だから仕方ない」とあきらめそうになっていましたが、もしかしたら【選択的注意】ができていないのかも? と考えられるようになりました。仕事や生活の仕方を工夫することで改善が見られないか、試してみようと考えています。

 

本当は【選択的注意】の仕組みが巧く働くようにトレーニングする方法があると良いのですが、今のところ見当たらないため、まずは、以下のことを取り組むつもりです。

 

●主婦がやりがちな「マルチタスク」を止めて、できるだけ一つのことに集中する。

 

●高齢の親との会話は話が脱線しがち。重要な話し合いが必要な場合などはポイントを紙に書き、それを見ながら集中して話をしてみる。

 

●今まで馴染みのないことや、新たな仕事の手順を覚える場合は【選択的注意】への加齢の影響が大きいため、重要なことをシンプルに、大きく書いて目に入りやすくするなどの工夫をしてみる。※1)

※1)【選択的注意】への加齢の影響についての研究では「探し出す目標が、よく知っていたり見慣れたものの場合、加齢の影響は小さくなる」と言われている。

 

 

高齢化社会の中でこれまでなら「老後」と定義づけられて来た年代でも、働かざるを得ないという方はどんどん増えていく社会環境にあると思います。少しでも能力の低下を防ぎ、社会の一員として前向きに働けるように情報収集と少しの努力はする必要があるのかもしれません。

ただし、病的な物忘れの可能性も捨てきれないため、物忘れの不安がある場合は専門医を受診することをお勧めします。

Tweet about this on TwitterShare on FacebookShare on Google+Email this to someone